動画の切り出しや音声の抜き出しは、本来なら編集ソフトを入れるところから始まります。かといってオンラインの動画変換サービスは、数百MBのファイルをアップロードするだけで待たされ、無料枠の容量制限にも引っかかりがちです。会議の録画や家族の動画となれば、そもそも預けたくないという問題も残ります。
OFFiler の動画ツールは、動画編集の定番エンジンである FFmpeg を WebAssembly に移植した FFmpeg.wasm をブラウザ上で動かします。動画ファイルはアップロードされず、端末のメモリ内で切り出し・分割・圧縮・音声抽出が完結します。以下では、目的に応じたツールの選び方、処理の仕組みと必要な環境、扱えるファイルの目安、よくある質問をまとめています。
目的別・動画ツールの選び方
「必要なところだけ欲しい」のか「軽くしたい」のかで、使うツールも処理時間もまったく変わります。
必要な区間だけ切り出す・分ける
1か所だけ切り出すなら「動画トリミング」です。プレビューを見ながらIN点とOUT点を決めると、その区間だけをMP4として書き出します。1本を複数のクリップに分けたいときは「動画分割」で、タイムライン上に分割点を置いて最大5つのクリップに分けられます。
どちらも映像を再エンコードせず、そのままコピーして切り出す方式(ストリームコピー)を採用しています。画質はまったく劣化せず、処理も圧縮に比べて桁違いに速いのが利点です。一方で、切り出し位置は動画内のキーフレームに合わせて数フレームずれることがあります。フレーム単位の厳密な編集が必要な用途には向きません。
静止画として取り出す
「動画スクリーンショット」は、動画を再生しながら気に入った場面でボタンを押すと、その瞬間をPNG画像として保存できます。再生・シーク・再生速度の変更(0.25〜2倍)もフレームの書き出しも、Chrome・Edge・Safari・Firefox のいずれでも動作します。
あらかじめ「00:15」「01:30」のように時間が決まっている場合は「フレーム抽出」のほうが速く済みます。タイムコードを複数指定して、該当する場面をまとめてPNGで書き出せます。資料用のキャプチャや、動画マニュアルから手順書を起こすときに便利です。
音声だけを取り出す
「音声抽出」は動画から音声トラックだけを取り出します。形式はMP3とWAVから選べます。MP3は可変ビットレートの高品質設定でエンコードするため、聞き取り用途なら十分な音質でファイルは小さく収まります。WAVは16bit PCMの非圧縮なので、音質を一切落とさずに保存でき、文字起こしサービスや音声解析に渡す前段としても扱いやすい形式です。
会議やインタビューの録画から音声だけを抜き出して書き起こしにかける、講演動画から音声を取り出して移動中に聞く、といった使い方ができます。
ファイルサイズを小さくする
メールやチャットに添付できないときは「動画圧縮」です。圧縮レベルと解像度をそれぞれ選べます。圧縮レベルは映像の品質基準(CRF)に対応していて、低圧縮ほど画質を残し、高圧縮ほどファイルが小さくなります。「画質を維持」を選ぶと、ほぼ劣化のない設定で解像度の変更だけを行えます。
解像度は元のまま・1080p・720p・480pから選択できます。指定した解像度が元の動画より大きい場合は拡大せず、元の解像度のまま処理します。スマートフォンで撮った縦長の動画でも、縦横比を保ったまま指定した高さに合わせます。
映像はH.264、音声はAACで書き出すため、出力されたMP4はほとんどの再生環境で開けます。複数の動画をまとめて投入すると一括で圧縮してZIPで返します。なお圧縮は全フレームを再エンコードする処理なので、トリミングや分割に比べて時間がかかります。先に必要な区間だけ切り出してから圧縮すると、待ち時間を大幅に短縮できます。
ブラウザだけで動画を処理できる仕組み
FFmpeg.wasm をブラウザで動かす
各ツールは、動画処理の定番であるFFmpegをWebAssemblyにコンパイルしたエンジンを読み込んで動作します。エンジン本体は約30MBあり、初回に一度ダウンロードして以降はキャッシュされ、同じセッション中は繰り返し使い回されます。エンジンはネットワークから取得しますが、あなたが選んだ動画ファイルが送信されることはありません。処理はすべて端末内のWebAssemblyメモリ上で行われます。
エンジンはシングルスレッド版のため SharedArrayBuffer を必要とせず、WebAssemblyが動く環境ならどのブラウザでも動作します。Chrome・Edge・Safari・Firefox の最新版で確認済みで、iOS Safari も含まれます。ただし処理は端末のCPUとメモリを使い切るため、モバイルや古い端末では時間がかかったり、長時間の動画でメモリが不足したりすることがあります。
メモリと処理時間の考え方
FFmpeg.wasm は動画ファイル全体をWebAssemblyのメモリに読み込んでから処理します。目安としてファイルサイズの2〜3倍のメモリを消費するため、扱えるサイズは端末の性能に左右されます。モバイル端末で150MB、パソコンで400MBを超える動画を投入したときは、処理が失敗する可能性がある旨の警告を表示します。
また、WebAssembly上のエンコード処理はネイティブアプリより時間がかかります。長い動画を丸ごと圧縮すると数分以上かかることも珍しくありません。必要な区間をトリミングしてから圧縮する、解像度を720pに落とす、といった手順を挟むと現実的な待ち時間に収まります。処理中はタブを閉じたり別ページへ移動したりしないでください。処理はページの中で走っているため、途中で中断されます。
対応形式と制限事項
- 入力形式
- ブラウザが読み込める動画ファイル全般(MP4を推奨)
- 出力形式
- MP4(H.264 + AAC)/MP3・WAV(音声抽出)/PNG(スクリーンショット・フレーム抽出)/ZIP(一括圧縮)
- ファイルサイズ
- 1ファイルあたり1GBまで。ただし処理にはファイルサイズの2〜3倍のメモリが必要で、モバイル150MB・PC400MBを超えると警告を表示します
- ブラウザ要件
- 最新のChrome・Edge・Safari・Firefoxに対応(iOS Safariを含む)。SharedArrayBufferは不要です
- 初回の読み込み
- 処理エンジン(FFmpeg.wasm)約30MBを初回のみ取得し、以降はキャッシュから利用します
- 費用・登録
- 無料。アカウント登録・ログイン・処理回数の制限はありません
動画ツールのよくある質問
動画ファイルはアップロードされますか?
されません。動画は端末のメモリに読み込まれるだけで、ネットワークには送信されません。ただし処理エンジンであるFFmpeg.wasm(約30MB)は初回にダウンロードされます。これはプログラム本体であり、あなたの動画とは無関係です。
Safari や Firefox でも使えますか?
使えます。処理エンジンはシングルスレッド版のFFmpegで SharedArrayBuffer を必要としないため、WebAssemblyが動くブラウザならどれでも動作します。Chrome・Edge・Safari・Firefox の最新版で確認済みで、iPhone の Safari も含まれます。ただしCPUを多く使う処理のため、端末によっては時間がかかります。
トリミングや分割で画質は落ちますか?
落ちません。トリミングと分割は映像を再エンコードせずにそのままコピーする方式のため、元の画質がそのまま保たれます。その代わり、切り出し位置は最も近いキーフレームに合わせて数フレームずれることがあります。
処理が終わらない・途中で失敗します。
メモリ不足が原因であることがほとんどです。処理にはファイルサイズの2〜3倍のメモリが必要なため、大きい動画ほど失敗しやすくなります。まずトリミングで必要な区間だけを切り出す、解像度を720pや480pに落とす、他のタブを閉じる、といった対処が有効です。スマートフォンよりパソコンのほうが安定します。
圧縮するとどのくらい小さくなりますか?
元の動画のビットレートと選んだ設定によります。スマートフォンで撮影した高ビットレートの動画を720p・中程度の圧縮で処理すると、大きく削減できることが多いです。逆に、すでに配信用に圧縮された動画では削減幅は小さくなります。まずは解像度を下げるほうが効果が分かりやすい傾向があります。
音声だけをMP3で取り出せますか?
取り出せます。音声抽出ツールでMP3またはWAVを選べます。書き起こしや音声解析に渡すなら無圧縮のWAV、そのまま聞く・共有するならファイルの小さいMP3が向いています。
複数の動画をまとめて処理できますか?
動画圧縮は複数ファイルをまとめて投入でき、結果をZIPで受け取れます。トリミングや分割は区間の指定が動画ごとに異なるため、1ファイルずつの処理になります。
出力されたMP4はどこでも再生できますか?
映像をH.264、音声をAACで書き出しているため、パソコン・スマートフォン・主要な動画共有サービスなど幅広い環境で再生できます。トリミングや分割の出力は元の動画のコーデックをそのまま引き継ぎます。
オフラインでも使えますか?
ページ自体はPWAとしてキャッシュされるためオフラインでも開けます。ただし処理エンジンを一度も読み込んだことがない場合は、初回のダウンロードにネットワーク接続が必要です。一度読み込んだ後はキャッシュから利用できます。
動画用語のミニ辞典
- コーデック
- 映像や音声を圧縮・展開する方式のこと。このサイトの圧縮では映像にH.264、音声にAACを使用します。
- ストリームコピー
- 映像を再エンコードせずそのまま複製する処理。劣化がなく高速な反面、切り出し位置はキーフレーム単位になります。
- キーフレーム
- 前後のフレームに依存せず単独で復元できるフレーム。ストリームコピーでの分割位置の基準になります。
- CRF
- H.264で品質を指定する数値。値が小さいほど高画質・大容量になり、圧縮レベルの選択はこの値に対応しています。
- ビットレート
- 1秒あたりのデータ量。高いほど画質・音質が良く、ファイルも大きくなります。圧縮率を左右する主要な指標です。
- SharedArrayBuffer
- 複数のスレッドでメモリを共有するブラウザ機能。マルチスレッド版の処理エンジンが必要としますが、本サイトはシングルスレッド版を使っているため必須ではありません。